第1章 奥まで愛して
『わあ……綺麗…‼︎』
その中身を見た私は思わず目を見張った。感嘆の声を漏らしているのは私だけではない。
あれだけシンデレラに反対していた……というより王子役を演じることにだけど、兵長ですら感心している。
「知り合いに腕の良いガラス細工職人がいるんだが」
団長は箱に視線を落としつつ言った。
一点の曇りなく透き通るそれは、深紫のクッションに包まれて其処に鎮座している。
世界にひとつしかないガラスの靴だ。
「事情を説明したら快く引き受けてくれたよ」
ふわりと笑う団長はとても嬉しそうだ。
公演の発足人である彼もまた童話“シンデレラ”が大好きなのである。
以前兵士を集めて紙芝居をやってみせた際、真っ先に涙をこぼしていたのは団長だった。