第1章 奥まで愛して
『兵長しかいないんですよ』
ライナー達が姿を消して数年。
人類は復興期を経てその繁栄を取り戻しつつあった。
「何と言われようが断る」
私は今でも時々思い出す。
そして、そっと開いてみるのだ。
彼らが最後に残してくれた短い手紙を。
『頑固を通り越してケチですね』
「なんだと……?」
ライナーやベルトルトは故郷に帰れたのだろうか。
アニやクリスタ、ユミルとはうまくやってるのかな。
共に笑い合った新兵達の幸せを祈りつつ私は兵長に食ってかかる。
『貴方がどれだけ断ろうと配役には従って頂きますからね』
私たち調査兵団は今、第一回兵団公演を控えていた。