第1章 奥まで愛して
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「断る」
兵長はさっきからこれの一点張りだ。
『兵長が適任なんですって』
書類の束を抱えて私は言い返す。
何度断られようがこれだけは譲れない。
『お願いですから承諾して下さい』
「だが断る」
『なんでそんなに頑固なんですか!』
思わず声を荒げてしまった。
すると兵長はこれでもかと睨みを効かせて唸り声を出す。
まるで敵に威嚇する肉食獣だ。
「頑固も何も……俺が王子様役なんか出来る訳ねぇだろうが…‼︎」
うわあ、目が本気だ。
怖い。
いつにも増して。
私は見慣れた筈の三白眼に肩を竦めさせて、ヘラリと笑ってみせた。