第1章 奥まで愛して
同じく窓辺に座っていた私は強引な手に引かれてベッドに腰を下ろす。
ギシ……ッ
古びたスプリングが軋んで、それから。
「貴女こそ僕の捜していた女性だ」
兵長は私の足元に跪いて小さく笑った。
台本通りの台詞。
落としてしまったガラスの靴をシンデレラが再び履くシーンだ。
『……っ』
突然始まった公演の稽古に頭がついていかない。
何より、兵長の演技が想像以上に上手いことに度肝を抜かれて思考回路が停止している。
「(おい、どうした……次はお前の台詞だろうが)」
兵長はスルスルと手際良く私の兵団ブーツを脱がして言う。
順序は逆になってしまったが、ガラスの靴を実際に履かさせるつもりらしい。
『あ……っえ、えーと…!』
露出した足に兵長の指が当たって心臓が跳ねた。
私は紅潮した頬を隠すようにして台本に目を落とす。