第5章 さよならの直前:マスルール
セリシアSIDE
「・・・仕事辞めるとか、いいませんよね。」
「そりゃ、やめないけど。・・・あ、そっか。」
思い出した。
あの時も、同じ言い方から始まったんだった。
もっともあの時はすぐにマスルールさんに言い当てられたんだけど。
「大丈夫ですよ。前みたいにはしません。」
すると、安心したのか半分起き上がっていた体をまた横にする・・・。
「だからって寝ないでください!!!」
「寝ませんよ。」
即座に返された・・・。
・・・マスルールさん、なんか変わったなあ。
前より口数が増えたっていうか・・・もちろん悪いことじゃないよ?
「シンドバッド王が、これを。」
そう言って封筒を差し出す。
中身が何かは知らないけど、手紙か何かなのかな?
「・・・。」
黙って読む。
・・・とりあえず、渡せって仕事は終わったし、王宮に戻るか・・・。
世話役ってわけだから、マスルールさんの部屋の掃除とかもやる。
まだ終わってないんだよね。
一礼して、踵を返して帰ろうとする・・・。
「セリシア。」
突然呼び止められて、驚きながらも振り返る。
「なんですか?」
「好きだ。」
・・・。
驚くほどはっきりと、あっさりと、しっかりと言った。
目と目が合う。
・・・そうだ、この前は別れだったから、言えなかったんだっけ・・・本当のことを。