第5章 さよならの直前:マスルール
マスルールSIDE
「ご苦労様、マスルール。今回はだいぶ活躍してくれたみたいだね。」
国に戻るやすぐにシンさんにそう声をかけられた。
ジャーファルさんはせわしく動き回り、指示を出しているようだった。
「あの、マスルールさん。」
ふいに後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには国の女官に支えられたセリシアがいた。
「どうしてもお礼を言いたくて・・・。本当に、助けてくれてありがとうございます・・・!」
そう言うと、彼女は女官に連れられてどこかへ去って行った。
おそらく、避難所になっている宿かテントに行くのだろう。
もしくは医務室・・・。
「お前の好きな子か??」
「・・・シンさん、顔にやけてます。」
「ふーん・・・。あの子って前まで女官だった子だよな、な?確かお前の世話役の。」
「ええ、そうです・・・。あんまりだらしなくしてると、ジャーファルさんに怒られますよ。」
そう言ってジャーファルさんの方を指す。
ジャーファルさんはこっちを見てにらむと仕事に戻って行った。
「・・・そうだな。あ、そうだ。マスルール、明日以降で構わないが、さっきの子を王宮に連れてきてくれ。ちょっと話があってな。」
「はぁ。わかりました。」