第5章 さよならの直前:マスルール
セリシアSIDE
苦しい。
それが、最初に思ったことだった。
息ができる。
肺に入る空気がとても気持ちよかった。
「セリシア・・・!」
誰かが呼んだ。
いや、誰かじゃない。
この声・・・。
「マス、ルールさ・・ん??」
息も絶え絶えに、目を開けながら聞く。
もしかしたら小さすぎて聞こえなかったかもしれないけれど・・・。
「よかっ・・・!!」
珍しい、と思った。
夢なのかな、とも思った。
死ぬ前に会いたいって思ったから神様が見せてくれた夢とか??
じゃなければ・・・マスルールさんが抱きしめてくれるなんて、都合がよすぎる気がした。
「目が覚めたのね!!」
後ろから声が聞こえた。
どこかで聞いた声。
「マスルール君、その子で最後。お疲れ様。全員無事よ。」
無事・・・全員。
ああそうだ、この人はヤムライハさんだ。
「船もやはり無傷では済まなかったから、いったん国に戻ることにします。急いでいる方には申し訳ないのだけれど・・・王とも話した結果です。それにこの位置ならシンドリアの方が近いわ。」
そこまで聞き取ったけど、それ以降はぼーっとしちゃって聞けなかった。
けだるくて、眠かった。
それで・・・。
マスルールさんにもう一度会えたことが嬉しかった。