第5章 さよならの直前:マスルール
セリシアSIDE
どうして、こんなことになっているのだろう?
船に乗って、マスルールさんが見えなくなるのを待ってから、船内に戻った。
それからしばらくは、なんてこともない、普通の船旅だったはずなのに。
1時間くらい・・・だろうか?
そのくらい経った後。
ザッパーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!
ひどい揺れとともに、海面から現れたのは巨大な生物。
「南海生物・・・。」
確かそんな感じの呼び方だったはずだ。
シンドリアでは、これが出るたびに宴会を開いていた。
いつだって、八人将の誰かが倒してくれたんだ。
けれど。
今この船には・・・八人将の皆さんはいない。
普段は誰かしらついているのだけれど、今日は人手が足りないとか何とかで、いないのだ。
つい一週間前に出たばかりだし、きっと大丈夫だろうとのことだった。
兵はいるけれど、大丈夫とはとても思えなかった。
呆然と立ち尽くすしかないのは、私だけではなかったみたいだった。
逃げるにも船の上、限られている。
「・・・っ!!きゃぁぁぁぁぁぁぁ――!!!」
自分のものとは思えない悲鳴が出た。
タコみたいな巨大な生物は、たくさんの触手で船の人を何人もぐるっとまいて持ち上げた。
そして、私もその中の一人だった。
死ぬのかな・・・私。
嫌だよ・・・それに死ぬのだったら、もう一度でいいから、会いたいよ・・・。
助けて、マスルールさん・・・。