第5章 さよならの直前:マスルール
マスルールSIDE
「彼女の悲鳴が・・・。」
聞き間違いだろうか。
そう言われてみれば、それだけな気もするが。
でも今確かに・・・。
「彼女って・・・辞めた女中の?そんなわけないと思うけど。」
「・・・そっスよね・・・」
とてつもなく嫌な予感がした。
普通に考えて、聞こえるわけのない声。
空耳の可能性は大いにある。
だけど・・・。
「・・・。すいません、ジャーファルさん。俺やっぱ行きたいです。」
「・・・まさか、船に?でもどうやって行くつもり?」
「・・・。」
それは、と口ごもる。
同じく船で行ってもたどり着くのには時間がかかるだろう。
けど他に行く方法はない・・・。
泳いでいくか?
船よりは早いかな。
「・・・ピスティにでも頼んでみましょう。ダメならヤムライハのところです。それでもだめならあきらめなさい。」
「え。」
驚いてジャーファルさんを見る。
彼はいたって真剣だった。
「君がそうやって行動しようとするところ、初めて見るからね。珍しいと思って。」
「ジャーファルさん・・・。」
「いい。無茶はしちゃだめだよ。」
・・・ありがとうございます・・・。