第5章 さよならの直前:マスルール
マスルールSIDE
ブ――――――――――。
船が出港の合図を出す。
これで、セリシアとは二度と会わなくなってしまうのだろうか。
仕方ないと・・・あきらめなくてはならないのだろうか。
結局彼女にとっての自分とは、仕事上の主、でしかないのだ。
「・・・マスルール、いいんだね?」
気が付くと隣にジャーファルさんがいた。
「何をっスか。」
「好きなんでしょう、あの女中のことを。」
「・・・。」
バレバレだったんスかね。
「大丈夫、他の誰も知らないと思うよ。私も誰にも言わないしね。」
微笑みながら言ってくれる。
でもなんでこの人にはわかったんだろう。
「・・・まあ、最後に決めるのは彼女だけどね?・・・君がこの船が見えなくなるのはだいぶ島を離れてからだろうけど、できるだけ最後まで見ててあげなさい。」