第5章 さよならの直前:マスルール
セリシアside
「私、生まれはバルバットなんです。両親と共に住んでました。」
ほんの数年前の話だ。
どこにでもあるよくある話。
「数年前に独り立ちしなくてはって思って、何となくここを選んだんです。」
別にどこでもよかったんだ。
たまたまシンドリア行きの船がいい感じの時間帯だったからっていう理由だし。
「それでこの国で働いて今になって。」
本当楽しい日々だった。
始めはホントに雑用中心で、けど他の女中とも仲良く働けて。
「二週間くらい前に母から手紙が届いて・・・。父さんが病で倒れたってあって。重いらしくて・・・一日でいいから帰ってきてほしいって。」
マスルールさんは一言も口をはさまずきいている。
「だから、帰るならちゃんと帰って親孝行しなくちゃっておもって。・・・だから、仕事も辞めたんです。帰るんです。」
マスルールさんとは離れたくない。
だけど両親をほっとけない。
だから、恋が実るわけないから帰ることを決めた。
「もしもの世界を考えてしまいまよ。」
マスルールさんにあたって砕けてたら?
告白がもう少し早かったら?
わかってる、バカだって・・・。
けど、考えちゃうんだよね。