第5章 さよならの直前:マスルール
セリシアSIDE
「あの、マスルールさん?」
手を優しく、でも固く握られていた。
どう引いても全く動じないのは、彼がふぁなりすっていう強い人種・・・?だからなのかな。
それとも、私が弱いだけ?
・・・やっぱり、男性だから、かな?
「・・・。」
何も言わず、じっとこっちを見つめてくる。
まるで行くなっていうように。
「手・・・放してください。私、荷物の整理もしなきゃいけませんし。」
まだ一日あるけど、早いうちにやってしまいたいのだ。
帰らなきゃいけないっていうのを、感じるためにも。
この国には、心残りがありすぎる。
いい国すぎるんだよね。
「・・・。」
マスルールさんは、何も言わなかったけど、しばらくして手を放してくれた。
「今まで、ありがとうございました。」
そう言って礼をして、その場を立ち去る。
背を向けて、部屋に戻ろうと思う。