第4章 黙祷:ジャーファル
ジャーファルside
知らなかった。
彼女が難民だったことは知っていたけどそれだけだった。
でも、これで今までの行動に納得がいったところがある。
「だから、謝肉祭のときも火事のときも必要以上に怖がっていたんですね?」
火の海となった故郷を、友達を思い出すから。
腕の中で、セリシアは頷く。
「だからときどき、ふとしたときおびえるように空を見上げてたんですね?」
突然だった空からの脅威におびえていたから。
きっと不安だったんだ。
またも彼女は頷いた。
「気づいてあげられなくて」
自然に腕に力が入った。
「すいません。」
セリシアのことを知っていると、分かっていると思っていたのはバカだった。
今も、こうして腕の中で泣いているというのに。
「そんなこと、ないです。」
小さな声で、反論する彼女。
「ただ、ひとつだけ・・・。叶わない願いを、聞いてもらえませんか?」
「私でよければ、どうぞ。」
はなして少しでも気が楽になるのなら。
普段よりもか弱く見える彼女を少しでも守ってあげたかった。