第6章 分隊長の恋/ジャン
馬車に揺られてどの位経っただろうか。
内地に比べればかなり寂れた故郷の景色に視線を彷徨わせているとが声を掛けてくる。
『トロスト区、だったんですね……隊長のご実家って』
彼女はきっと数年前のトロスト区で起きた攻防戦を思い浮かべているのだろう。
幾ら復興が進んだとは云え、まだまだあの日の爪痕が残る町並み。
崩れた石垣を見つめて口を開けばはじっと聞き入ってくれる。
「俺は……元々憲兵を希望してたんだ」
お前には話した事なかったな。
ぽつり。
ぽつり。
過去の記憶を拾い集めていくように言葉を並べていく。
軽く目を瞑ると、今でも浮かぶのは失った友の顔。
俺は愛するに今日。
自分の全てを話そうと思い立って故郷に連れて来たのであった。