第6章 分隊長の恋/ジャン
「……っ…‼︎」
『分隊長』
「……ん゛?」
本日三度目のやり取りを経ての顔を見遣ると、彼女はドン引いた様子で此方を見つめていた。
『泣き過ぎです』
鼻水垂れてますよ。
は冷たく言い放ちながらもハンカチを差し出してくれる。
花の刺繍をあしらった綿織物。
なんとも女の子らしい。
「ん……ありがとう」
泣き腫らした目を彼女のハンカチで拭いつつ劇場を出る。
外は夕暮れ時で、あんなに高い所にあった太陽が店仕舞いを始めた所だった。
さてこれから食事でも……と行きつけの洒落たレストランを思い浮かべていると、シャツの裾が引っ張られる。
不思議に思って視線を下ろすとそこには微笑んでいるが居て。