第6章 分隊長の恋/ジャン
に一喝されて芝居に意識を戻すと、スルスルとその世界観に引き込まれていった。
困難を乗り越えて愛し合う二人。
若い男女を取り巻く世界はあまりにも残酷で。いつしか二人は種族同士の争いに巻き込まれていく。
“ああ……なんてこと…‼︎”
悲劇は起きた。
戦乱の世に翻弄された恋人達はその仲を引き裂かれたのだ。
“死”によって。
冷たくなった愛しい人の身体に覆い被さって泣き崩れる女。
その涙は恐ろしい程に美しく、それが芝居であることを忘れてさせてしまう魔力があった。
血糊を塗って倒れている男にいつ来るやも分からぬ自分の未来を重ねる。
最期のキスを交わす二人。
女は自らその命の幕を下ろし、男が待つであろう天国へと旅立つのであった。