第6章 分隊長の恋/ジャン
演目はとある男女の悲恋を描いたラブストーリーだった。
芝居など殆ど観たことのない俺は時々観客が漏らす感嘆の声や、場面転換ごとに挟まれる拍手にどうしても遅れを取ってしまう。
一方、手を繋いだままのはこう云った場に慣れているようで。
『……っ』
芝居が盛り上がりを迎える度に感涙しそうになっている姿を横目に見やる。
可愛くてしょうがない。
俺はもはや芝居そっちのけでの顔ばかり眺めていた。
『(分隊長)』
「(……ん?)」
あれ、デジャヴかな。
そんな事を思いつつ返事を返す。
次の瞬間が発したのは兵長顔負けの冷酷非道な一言だった。
『(ジロジロ人のこと見てないで芝居に集中したらどうですか御行儀悪い)』
「(すいませんでした)」