第6章 分隊長の恋/ジャン
『あの兵長が有給を⁈』
壁外調査から帰還した翌日。
兵長の計らいにより数ヶ月振りの休日を取ることになった俺達は、内地にある芝居小屋に来ていた。
「余程情けねぇ顔してたんだろうな」
人類進撃の礎となって戦死していった部下達をふと思い出す。
まるで胃がひっくり返ったみたいだ。
失った命の事を想うと手足が氷のように冷たくなる。
『分隊長』
「……ん?」
のいつになく真剣な声。
覇気のない顔で返事を返すと彼女は小さな手を俺のそれに重ねて言葉を紡いだ。
『隊長は、優しい方だから……普段は嫌な奴だけど』
えーと。
それは褒めてるのか貶してるのか。
困惑気味に笑いを漏らす。
鳴り響く開演のベル。
暗幕が閉じられて闇に包まれた劇場で、俺は彼女の手をそっと握り返した。