第5章 オトナになろう/エレン
「……っ⁈」
キスされた。
その事に気付いた時にはもう彼女の唇は離れていて、即座に抱き締めてやれなかった自分が情けなくなる。
『えへへ。キス、しちゃった』
勘弁してくれよ。
どんだけ可愛いんだコイツ。
「………っ」
込み上げた愛しさをぶつけるようにして彼女を腕に閉じ込めた。
艶のある髪に顔を摺り寄せると香るシャンプーの匂い。
身を縮めて俺を見る瞳はまるでガラス玉のようだ。
『エレ、ン……?』
「なあ。お前、俺としたいか?」
我ながら阿呆な質問だと思う。
でも、怖いんだよ。
もしが望んでなかったらどうする?
ヘタレと言われようが何だろうが関係ない。を傷付けるような事だけは絶対したくねぇんだ。