第5章 オトナになろう/エレン
『エレンからデートに誘ってくれるなんて珍しいね』
聞こえるのは可愛らしいの声と、
二人分の足音。
手を繋いで歩く林道はシンと静まり返っている。
「ああ……たまにはな」
『私、嬉しい』
俺の下心とは対照的な彼女の笑顔。
純朴なその姿を見ていると、自分の中に渦巻く下らない意地が心底恥ずかしくなって。
「お前が喜んでくれて良かったよ」
無理にヤるもんでもねぇよな……と結局俺は元来の考えに戻るのであった。
それこそが俺の独りよがりだったと気付かされるのは、もう少し後の話。
『ねえ……エレン』
「ん?」
林道をしばらく行った時だった。
か細い声で名前を呼ばれて振り向くと、突然唇に柔らかい熱が重なったのだ。