第2章 芍薬の蜜/銀時
「ひーじかたァァ……てめ、もうちょい楽しそうにしやがれってんだよゥ」
彼は気付いているのだろうか。
いや、きっと気付いていないだろう。
貴方が好き。
届かぬ想いが夜の宴に溶けていく。
「はいはい……ったく初っ端から酔い過ぎだぞ、とっつぁん」
「何を〜ゥ?オジさん酔ってなんかいないよ?下の方だってまだまだ24時間戦えちゃうよ?」
きゃー!
パパえっちィー!
周囲の同僚がドンペリ片手に黄色い声を出している。
「ネタが古過ぎんだよジジィ」
小声で悪態をつく土方さん。
私はそんな彼を見つめつつ、呆れた顔でハシャぐ松平公を眺めるのであった。
そんな時だ。
「さん」
本指名入りました。
テーブルの傍らでボーイが声を潜めて告げた。
『(本指名……?)』
今日は誰とも約束してない筈だけど。
訝しげな視線を上げると、見覚えのある白髪が目に飛び込んでくる。