第2章 芍薬の蜜/銀時
『はい、どうぞ』
グラスの汗を拭って冷茶を手渡すと土方さんは軽く礼を言って一口。
男らしい喉仏がごくりと鳴るだけで私の心臓は大きく跳ねた。
恋は盲目だ。
どうしようもない程に。
そして、叶わないからこそ……また更に情熱は燃え上がる。
「山崎ィ!お前飲み過ぎんなよ?この間みてェに潰れても二度と介抱してやらねえからな」
「ひっ……!その節は…あの、大変お世話になりました!」
土方さんには心に決めた女性が居るのだそうだ。
もうこの世を去って随分経つ方らしい、と云うのは其処で冷や汗を垂らしている山崎に以前聞いた。
何でも相当な美人だったんだとか。
呆気ない失恋だった。
告白もせぬ内に恋敗れるとは夢にも思わなかったが、未だに諦められずにいるのも事実。
当てのない恋情は日々、
健康な心を蝕んでいく。