第2章 芍薬の蜜/銀時
キン……ッ
何処ぞの金持ちから貢がれた高級ライターを鳴らした。
そっと手を添えて火を差し出せば、土方さんは慣れた様子で顔を近付けてくる。
『(……相変わらず綺麗な御方)』
切れ長な瞳に思わず見惚れたのも、
束の間の夢。
煙草に火が灯るや否や愛しい黒髪は離れていってしまう。
『薄め?それとも、濃いのがイイ?』
寂しさを紛らわす為に話題を変えた。
真選組の名が書かれたボトルに手を掛けて、もう片方で空のグラスを引き寄せる。
『氷は入れないんですよね?』
一瞥をくれる鋭い眼差し。
もっと見ていて欲しいのに、すぐ逸らされてしまう。
「いや……今日は飲まねェ」
上の接待だから。
俺が酔う訳にゃいかねェだろ。
不機嫌そうな彼は溜息をひとつ。
咥え煙草に目を細める仕草が堪らない。
喉から手が出るほどこの人が欲しい。
しかし、それが叶わぬ恋であることは自分が一番良く分かっていた。