第2章 芍薬の蜜/銀時
『お勤めご苦労様です』
零れそうになる恋情をグッと喉の奥に押し込めて言葉を紡いだ。
「……あァ」
彼は掠れた声で短い返事をする。
至極つまらなそうな横顔。
真選組の隊士を引き連れてしょっちゅう遊びに来てくれるが、この御方はいつも心ここに在らずと云った感じだ。
私はそんな彼に惹かれていた。
硬派で、
寡黙で。
かぶき町には到底似合わぬ雰囲気を持つ真選組の副長殿。
もちろん彼を狙う敵は多いけど、
その誰にも靡かぬ態度がまた女心を狂わせるのであった。
『少しお痩せになりました?』
「最近忙しいからな」
他愛もない営業トーク。
何の感情もない言葉。
彼が真新しい煙草を咥えたのをきっかけに、あっさりと会話が途絶えてしまう。