第2章 芍薬の蜜/銀時
『お待たせしました』
指定されたテーブルに着くなり私は小首を傾げて微笑んでみせた。
方々から感嘆の色を孕んだ男達の溜息が聞こえる。
一際大きな反応を見せたゴリラ。
あれは確かお妙の客だ。
今日は休みなのだろうか。
辺りを見回すがお妙の姿はない。
「いや〜!いつ見ても別嬪だなァ!」
この近藤という男。
さっきから引っ切り無しに私を褒めているが、周囲の白い目に気付いているのだろうか。
本命の女がいるなら脇目を振らず静かにしていればいいのに。
つくづく、
雄とは馬鹿な生き物だと思う。
同僚の客と必要以上に喋るべからず。
私は近藤の熱視線を適当にやり過ごして目当ての席に着いた。