第2章 芍薬の蜜/銀時
鏡を囲む眩い照明。
灰皿に押し当てる煙草。
色のない唇に真っ赤なルージュを走らせて、虚しい恋心に蓋をする。
クローゼットは豪華絢爛。
和装から洋装まで、ここには女を着飾るための物が何でも揃ってる。
お気に入りの衣装は黒。
背中に芍薬の刺繍があしらってある異国製のカクテルドレスだ。
「ちゃん、3番テーブル団体さん入ったから宜しくね」
私は生きる。
今日も、
このどうしようもない町で。
『団体?』
「そう、真選組のお偉い方だから。くれぐれもご無礼のないように」
此処は夜の町。
惚れた腫れたも全て偽り。
渇いた恋愛を売る夢世界。
フロアに続くドアを潜れば、そこには反吐の出るような愛憎劇が嫌と云うほど転がっているのだ。
『……分かった』