第1章 SHE IS MY.../ジャン
「はー……かっこ悪ィ」
自室にて項垂れるジャンはに怪我の手当てをしてもらっていた。
野犬を撃退する際、誤って牙が刺さったらしい拳には痛々しい穴が開いている。
「どうも締まらねぇんだよな」
ジャンは遠くを見つめて呟いた。
思えばいつもそうだ。
あの時だって、この時だって。
悪夢のように苦々しい青春の記憶が小さなハートを襲う。
しかし、の眼にはそんな分隊長がどうにも愛しく見えたようで。
『……った…ですよ』
彼女は頬を赤らめながら呟いた。
「え?」
よく聞こえなかった。
そう言えば嘘になるかもしれない。
でも。
どうしても、
もう一度だけ聞きたくて。
ジャンはにやけそうになる頬を必死で引き締めて言った。
「何、聞こえなかった」