第13章 青学☆不二 周助 編
植物園を出ると、サボテンの一つを彼女に差し出した。
不二『今日、付き合って貰ったお礼。良かったら、育ててみてよ。』
巻村『え、でも…サボテンはそんなに詳しくなくて…。』
不二『僕が教えるよ。そんなに難しくないから。』
巻村『わ、分かりました…。不二さんに教えて貰えるなら頑張ってみます。有難うございます。』
その時に見せてくれた笑顔は、嫌々ではなく本心からの笑顔だった。
不二『そうだ。アドレスだけでもいいから、連絡先…聞いてもいいかな?』
しかし、彼女からの言葉は意外なものだった。
巻村『…すみません。今は、携帯持っていなくて…。』
不二『今…は?』
巻村『落として壊しちゃって……。両親が忙しくて、新しいのを買いに行けなくて。それに……。』
不二『それに?』
巻村『番号を変えようと思って……。ちょくちょくと、無言電話とかあって…。』
不二『そう。なら、仕方無いね。残念だけど…。』
巻村『あ…でも……不二さんが良ければ……。新しいのを買ったら連絡を…。』
彼女の提案で、僕の連絡先を教えることにした。
楽しみだな……いつになるか分からない。でも……。
でも、彼女からの連絡が来る。
この日の休みは、とても楽しくて……さらに、今後の楽しみも得られたんだ。
彼女からメールが来たのは5日後。
僕が入浴中に、メールが来ていたようだ。
僕は、直ぐに返信した。
就寝までの間、何度かやり取りをしたメール。
彼女からの文面は、穏やかで僕を気遣ってくれているものばかりだ。
優しい気持ちになる。
彼女に会いたい…。声を聞きたい…。でも……儚い願いにほかならない。