第13章 青学☆不二 周助 編
手塚『不二、帰らないのか?』
不二『あ、手塚。僕は、これから図書室へ本の返却に行くんだ。』
手塚『そうか。では、またな。』
不二『うん。足元に気をつけて。』
手塚『あぁ。』
僕は、手塚と分かれ図書室へと向かった。
雪のせいか、放課後の図書室は静かなものだった。
新しく本を借りようと、本棚に目を走らせる。
新刊のサボテンの育成の本を手に取り、パラパラと頁をめくる。
不二『…これでいいや。』
貸し出しの依頼をして、借りた本を鞄に仕舞う。
廊下を歩きながら、降り続く雪を見ていた。
グランドでは、ぬかるんだ足元を気にもせず雪合戦をしている男子たち。
不二『フフ…楽しそうだな。』
やがて、靴箱に到着して……フト、外にいる人に目を向けた。
そこには……無造作にマフラーを巻いて、空を見上げている女の子がいた。
北風に揺られ、真っ直ぐの艶やかな長い髪が踊っている。僕は、女の子から目が離せなかった。
真っ赤になった頬、綺麗な瞳が雪に魅入っていた。
確か……僕の一つ下の…。人気があるようで、僕も名前くらいは知っていたけど接点はなかった。
僕は少し考えて……自分の傘を女の子に差し伸べた。
咄嗟に空の視界を遮ったから、驚いた顔をした女の子が僕を見た。
不二『風邪…ひくよ?』
女の子の手には、傘は無い。
?『有難うございます。』
柔らかい穏やかな声色。
不二『雪…好きなの?』
?『はい。寒いですけど、綺麗ですから。』
不二『そうだね。傘は持ってないようだけど…。』
?『忘れてしまって…。』
不二『じゃぁ、送るよ。このまま君が雪だるまになる前に体を温めないと、風邪をひいてしまうだろうからね。』
?『雪だるまに……クスクス…本当ですよね。でも、ご迷惑じゃ…。』
不二『構わないよ。何かの縁だろうし。』
僕は、女の子と駅まで一緒に向かった。