第12章 四天宝寺☆千歳 千里 編
今は、部活中。
忍足『千歳、何かいいことでもあったんか?』
千歳『どうしてそう思うばい?』
忍足『何か、楽しそうやん。』
明日は、女の子と再会の日。
だから?
忍足『白石は何か変やし、財前も何かあるみたいやし…次は千歳や。』
こういう時の謙也は鋭い。
でも…取り立てて話すことでもなか。
千歳『明日も、晴れるか楽しみと。』
謙也は、キョトンとしていたが…これ以上は何も追及されることはなかった。
有難いばい。そういう察しのいいところは。
翌日の約束の1時半。
場所は駅前。
人混みの中に、あの子の息を切らして走ってくる姿を見付けた。
あんなに走ったら転んで……そう思った時には、女の子に向かって俺の足は動いていた。
千歳『ナイスキャッチと。』
咄嗟に抱き留めた女の子の体。軽く息を吐く。
千歳『そんなに走ったら転んでしまうとよ。真弓さん。』←真弓は苗字
アドレスを交換し、合間にやり取りをしていたことは誰にも言ってない。
真弓『びっくりしたぁ…。』
千歳『怪我はなかとね?』
真弓『はい。千歳さん、ありがとうございました。』
こんな時だが、目を真ん丸にしていた彼女の表情は可愛かと。
真弓『あ…遅れてすみませんでした。』
千歳『遅れてないばいね。焦らんでもよかと。それよりこれから…。』
真弓『あ、こっちです。』
昨晩のメールで、どうしても俺を連れて行きたい場所があるとのことで……。
いつもは通らない場所を歩いていく。そして…。
竹藪の中に細い路地があり、その中に俺たちは風景に溶け込むかのように入って行った。
風通しがよく、笹の葉の擦れる音が耳に心地いい。
真弓『もう直ぐですから。』
風に乗って、彼女から薫ってくる優しいパンの匂い。
時間ギリギリになったのは、きっと…パン屋が立て込んでいたからだろう。
でも、彼女は言い訳一つしなかった。
偉いばいね。