第12章 四天宝寺☆千歳 千里 編
【自由人】
周りからよく言われる。
今日は週末。
ノンビリと電車に乗って、宛のない散歩を楽しむことに……。
この日の散歩が、彼女との運命的な出会いとなった。
旅は良かとよ。
心を開放してくれるし、自身もその風景の一部になるから。
千歳『ここらで降りるばいね。』
フラりと降り立ったのは、片田舎の小さな駅。
勿論、初めての場所。
鉄下駄を鳴らし、初夏の空気を胸一杯に吸い込んだ。
自然が一杯で、気持ちのいい場所だ。
鳥の囀りや、ヒラヒラと飛ぶ蝶々を見ながら宛もなく歩く。
一頻り歩き回り、辺りが夕焼け空に色付いて来た。
千歳『そろそろ帰ると。』
駅に到着すると……女の子が一人で今にも泣き出しそうな顔をしていた。
千歳『なんばしょっと?』
?『えっ?あ…えっと…今…何って?』
千歳『ここんし?(地元の人?)』
?『こ、ここんし?えっ?』
千歳『あ~…地元の人?』
女の子は、首を横に振った。
千歳『どこんし?(何処から来たの?)』
あ、意味が通じないか…。
千歳『迷子かいね。』
事情を聞くと、親戚の家まで一人で出掛けていて…疲れからか電車の中で寝てしまい慌てて電車を降りた。
降りたのはいいが、全然知らない場所。
ついでに時刻表を見たら、次の電車は一時間後。
片田舎なので、回りには誰も人が居ない。
電話するにも、両親は共働き。ついでに、携帯の電池もさっき切れた。
そして……慌てて電車を降りたから、手荷物は電車の中に…。
そう……帰るにも電車賃がない。頼る人もいない。
確かに、これじゃ途方にくれる。
千歳『どこまで行くとね。』
女の子から聞いた駅は、俺と同じ駅。偶然?それとも、運命ばいね。