第1章 立海☆仁王 雅治 編
道のりは険しいのう……。
それとも、分かっててのこの態度か?
榊『あっ!?』
一際大きな声を出す妖精。
どうやら、見付かったようじゃ……。
振り返ると、確かに同じ3年の男。顔と名前は知っているが、面識はない。
相手も俺を見て、少し怯んだ様子が。
ん?背後に……。
俺の背後に隠れる妖精。
キュッ……俺の制服をつかんでいる。
分かってて……やって……ないようじゃのう。
顔色が良くない……。
仁王『何か用か?高橋。』
高橋『お前にじゃない。俺が用があるのは、榊さんにだ。』
そう言ったものの、お前さん……逃げ腰じゃのう。
仁王『こんなに怯えさせて、一体、どんな用があるのか聞かせて欲しいのう。』
高橋『に、仁王には関係ない!』
仁王『ほぅっ……。』
目を細めると、後退りした相手。
仁王『これからのお前さん……色々と気を付けた方がいいようになるかもしれんが、勿論、覚悟は出来ているじゃろうな?』
詰め寄った俺に、青い顔をして逃げ出した相手。
俺に楯突くなんぞ十年早い。
仁王『もう付きまとわれることはないじゃろ。安心しんしゃい。』
榊『……。』
仁王『榊?』
榊『えっ?』
仁王『大丈夫か?顔色が良くないが……。』
榊『何か……気が抜けちゃって……。』
少々、放心状態の妖精。
女一人で、不安だったのかもしれない。
榊『……ありがとう……ございました。』
仁王『気にしなさんな。何かあったら、いつでも言ってきんしゃい。』
榊『でも……。』
仁王『なら、また逃げるだけの生活になるぜよ。』
榊『それは……嫌です。』
あ、不味い……余計に不安に?
妖精の瞳に薄っすら、涙が……。
仁王『不安にさせた詫びに、何でも一つだけ要望を言いんしゃい。』
咄嗟に、そんな言葉を告げてしまった。