第1章 立海☆仁王 雅治 編
榊を家に送り届けてからの帰り道……。
最後まで聞けなかった【蒼】の存在。
明白に、榊にとって特別な存在に間違いはない。
翌日、昼休みに裏庭を歩いていると……慌ただしく誰かから逃げている様子の妖精がいた。
何度も振り返っては、足を止めて……乱れた息を調えている。
榊『フウッ……しつこいんだから。』
仁王『何がしつこいんじゃ?』
榊『キ!?』
悲鳴をあげそうな妖精の口を、咄嗟に塞いだ。
仁王『俺じゃ。ここで悲鳴をあげたら、逃げていた相手に見付かるかもしれんぜよ。』
妖精は、何度も頷いた。
仁王『で、何から逃げていたんじゃ?』
榊『知らない先輩です……さっきの休み時間に訪ねて来て……友達が追い払ってくれたんですけど……また、現れて……。』
仁王『大変なようじゃのう。でも……。』
榊『でも?』
仁王『周りにいい奴はいないんか?』
榊『周り……。』
一頻り思案しているようだが、どうやら考えるのを止めたようで……小さく溜め息を吐いた。
仁王『そんな顔をしなさんな。俺で良ければ撃退してやるぜよ。二度と付きまとおうと思わないくらいに。』
榊『仁王先輩が?』
仁王『何じゃ、俺では役不足か?』
榊『いえ……そういう訳では。ただ……恨まれちゃうかなって。』
仁王『恨む?誰に?』
榊『仁王先輩のファンの人達です。周りにも、結構いるんですよね……。』
仁王『それならお互い様じゃろ?ま、俺は恨まれても気にせん。』
頭を撫でると、少し頬を赤く染める妖精。
榊『仁王先輩って、面倒見がいいんですね。あんなにファンの人達がいるのは納得しちゃいます。』
あれ?それなりに意思表示したつもりなんじゃが……眼中にないってことか?
でも、ここで漬け込んだら周りの追っかけと同じ立場になる。