第10章 四天宝寺☆白石 蔵ノ介 編
俺が、彼女に違和感を感じたのは【訛り】が違ってたこと。
はんなりした話し方は、雰囲気を和らげ穏やかな空気を醸し出していた。
テニス部を観に来ていたから、誰かのファンとかかって思ってたんやけど違ってたみたいや。
サラサラの髪を翻して、女の子らに手を振ってはいなくなってしもうた。
それでも、ちょくちょくと姿を見掛けるようになって……。
でも、この日の放課後は……男連れやった。
屈託なく笑う笑顔は……お世辞なく可愛かった。
隣りの男はカレシやろか?
仲良さそうに、女の子を小突いたりして……俺らに当て付けか?
そう言えば…男の方は、千歳と同じクラスの…。
どうしてなんやろ……俺の耳が、女の子の声を拾う。
そしてこの日も……友達に手を振って居なくなった。
男連れで……。
けど……あの言葉と声は、癒されるわ。
そんなこんなで…三年生に進級した日のこと。
保健室に行くと、オロオロとしているあの女の子がいた。
白石『どうかしたんか…って、怪我してるやないか。』
指先をハンカチで巻いているが、流血状態が一目瞭然やった。
白石『手当てするから、そこに座り。』
?『で、でも…。』
白石『ええから。』
俺は無理矢理女の子を座らせ、指先の消毒をして絆創膏を貼った。
白石『刃物で切ったみたいやけど…。』
?『調理実習だったんですけど、包丁を持っていた人がふざけてて…。』
白石『包丁持ってふざけるって…。』
?『あ、先生にも叱られていましたし、凄く謝ってくれたから…。』
白石『自分…怒ったりしなさそうやな。』
?『えっ?』
白石『テニス部、観に来てるやろ?』
?『テニス部?観に行くと言うか…友達に誘われて…でも、私は…あまり詳しくないから。』
何や…付き添いみたいなもんか。