第9章 聖ルドルフ☆観月 はじめ 編
初めて君を見たのは、静かな放課後の礼拝堂。
明るすぎる髪色と翡翠色の瞳は……そう、暗い深海を思わせるものだった。
彼女は西洋のどこかの国と日本のハーフらしく、西洋の血を色濃く写し出した容姿をしていた。
【美しい…】
そう感じさせられた。
儚げで…触れれば消えて無くなりそうなその存在感。
その彼女が…僕の1つ下の学年に交換留学生として編入してきた。
笑み1つ無く、周りからは孤立した存在。
寄宿舎で生活をしているものの、誰一人彼女に近付く者はいなかった。
彼女の方も、必要最低限しか他人と言葉を交わさないものの彼女の日本語は流暢だった。
そんな彼女に興味を持ったのは、【運命】だったのかもしれない。
彼女との接点は無い。
そう…このまま周りと変わらず時が過ぎていくものだと思っていたんだ。
でも……【運命】は、それを見逃す筈もなく…。
彼女の深い【諦め】を…僕は、知ることとなった。
寂しくて、寂しくて……行き着いた先の【諦め】を。
ギギギッ………
【運命】に導かれるように、僕は半開きとなった礼拝堂のこの扉から零れる【音】を便りに訪れる。
まるで……僕に、君を救って欲しいかと言っているかのように。