第7章 不動峰☆伊武 深司 編
栗田『ありがとう。私なら大丈夫。あんなに味方してくれる人がいる。それに…変わらない伊武くんがいる。だから、頑張るよ。』
伊武『うん。それでいいんじゃないかな。』
教室に戻ると、おさまっていた言い合い。
クラスの女子たちが、栗田を取り囲み励ましている。
俺は……つま弾き。ま、いいけど…。
栗田の笑顔を見て、俺も少しだけ口元を緩めた。
教科書……ずっと、来なければいいのに…。
放課後、アキラからもめ事のことを聞かれ説明した。
神尾『何だよ、それ…。栗田も災難だったな。』
伊武『全くさぁ…普段、持ち上げといて…あれはないだろって思ったけど。根性ないしさ…。ま、俺としては………だけど。ボソッ』
神尾『え、今何って?』
伊武『何でもない。』
本当に、教科書…来なければいいのに。
でも、このあと教科書は揃って……暫くして、席替えが行われて離れ離れとなった。
離れてしまえば、話す接点もなくなり……。
クラスの男子らも現金なもので、今は普通に接しているようだ。
まぁ…栗田が笑っているのならいいけど…。
この日、生憎の雨。
空を恨めしそうに見上げている栗田がいた。
さっきから、傘に入らないかと誘っている奴ら。
でも…誰の誘いにものらず見送っている。
俺は、ボンヤリと栗田を見ていた。
誰かを待っていて……その【誰か】と相合い傘で帰る光景を想像していた。
どうしてだろう……何か、胸が痛んだ。
神尾『あ、深司!終わるの早かったんだな。』
返事をしようとした時、誰かに腕を引っ張られる感触。
振り返ると、栗田がいた。
伊武『栗田?どうかした?』
栗田『あ、神尾くんと約束があった?』
伊武『何もないけど。』
栗田『本当?じゃぁ……傘に入れて貰えないかな?』
伊武『えっ……。』
栗田『あ、ダメ…かな?』
伊武『いいよ。じゃぁ、帰ろうか。』
神尾『俺は無視かよ!』