第7章 不動峰☆伊武 深司 編
栗田が申し訳なさそうな顔をしたから、慌てていつもの明るい声で見送ってくれたアキラ。
俺は……無視?
俺の傘は、一般的なものより大判だ。
でも、いつもは広いスペースを良く思ったことなどなく…ただ、重い…それだけだった。
栗田『大きいねぇ。伊武くんの傘。』
伊武『デザインとか色が気に入って買ったんだけどさ……確かに大きいけど、だからこそ重いんだよね。』
栗田『あ、私が持とうか?』
伊武『女の子に持たせるほど、俺は非力じゃないし鬼でもないよ。』
栗田『フフフ…ありがとう。……良かった。』
伊武『何が?』
栗田『伊武くんが変わってなくて。』
伊武『俺は…俺だけど。』
栗田『うん。実証されたよ。』
どことなく嬉しそうだ。
伊武『ねぇ、道草しない?』
栗田『うん、する!』
二つ返事で俺の提案に賛同してくれた。
いつものCDショップで二人で音楽を聴いたり、お互いの好きな曲を教え合ったり……時間はあっという間に過ぎていく。
栗田『早かったなぁ…時間が経つの。』
伊武『最近…何かあった?』
栗田『えっ…あ、うん。告白を…されたの。』
頭を殴られた気分になった。
栗田『ちょこちょこと話したりする人なんだけど……あ、悪い人じゃないんだよ。ただ……違うなぁって。上手く言えないんだけど…そう思ったら、どうしても伊武くんと話したくなったんだよね。』
伊武『返事はしたの?』
栗田『うん。ちゃんとごめんなさいしたよ。ごめんね……我が儘言って付き合わせて。伊武くんは……どうなの?』
伊武『どうって?』
栗田『あ、うん。今のは無し!気にしないで!』
伊武『…する。』
栗田『えっ?』
伊武『気にする。まぁ…実を言うと俺も似たようなものなんだよな。けど……きっと…俺は、栗田のことが気になるんだと思う。』