第7章 不動峰☆伊武 深司 編
それから暫く……栗田にとってのハプニング。
揃うであろう教科書が、業者の手違いでまだ日数がかかることとなった。
面白くないと常日頃から思っているであろう、クラスの男子たち。
妬みの声が酷い。
まぁ、俺は全然気になんかしないんだけど…。
たださ…栗田の様子が最近おかしく感じるのは、気のせいではない筈。
だってさ………
今日は…とうとう爆発して、今に至っているから。
怒らせると怖いって分かったクラスメイトたちは、蜘蛛の子を散らしたように逃げ惑い、中には目を泳がせていたり…様々だった。
伊武『根性ないなぁ…。ボソッ。第一さぁ、勝手なイメージ押し付けて、そうじゃなかったからって手のひら返した態度って、どうなんだよって思うけど。』
みんな、気まずそうな表情。耳が痛いのだろう。
ま、誰がどんな風に思おうが俺はどうでもいいけど。
でも、栗田は……少なくとも、新しい環境に慣れようとしているしそれを全て否定するのは違うと思う。
今度は、クラスの女子らが栗田を庇い……いたたまれない顔をしている栗田を俺はその場から連れ出した。
向かった先は屋上。
伊武『あのさ……我慢しなくていいと思う。言いたいことは言えばいいよ。どんな栗田でもさ…俺は変わったりしないから。』
俯いたままの栗田の頭を撫でた。
伊武『ま、俺としては……教科書が届くのが延期になって、ざまぁみろってあいつらに思ってるけど。ボソッ』
栗田『えっ?迷惑とか…。』
伊武『栗田はさ…俺が、我慢強いタイプだと思ってる?』
栗田『プッ……何それ…。伊武くんは、最初から優しかったよ?』
伊武『なっ!?』
栗田『…ありがとう、伊武くん。あ~ぁ、席替えなんか無ければいいのになぁ。ずっと…伊武くんの隣りがいいのに…。』
伊武『うん。俺も、そう思う。』