第7章 不動峰☆伊武 深司 編
2年に進級してGW間近…そんな中途半端な時だった。
先生と一緒に入ってきたのは、【女の子】だった。
クラスの男らがハッと息を飲むくらいの綺麗な女の子。
栗田『栗田 香です。宜しくお願いします。』
頭を下げた時、長い髪がサラリと流れた。
小さなドヨメキ…。
先生『えっと…席は、伊武の隣りが空いているな。暫く悪いが、栗田の教科書が揃うまで面倒を見てやってくれ。』
伊武『はい。』
周りからは羨望の眼差し。
俺の隣りの席に、転校生が来た。
栗田『宜しくね。伊武くん。』
屈託なく笑顔を見せる栗田。
伊武『いいよ、それくらい。』
その日の昼休み、俺はアキラらと屋上で昼食を取っていた。
そこへ慌ただしい足音が近付いて来たかと思うと、屋上へと出る扉が開いた。
伊武『あ、栗田…。』
栗田『伊武くん…。』
伊武『どうかしたの?慌てているようだけど。』
栗田『何か…収拾つかなくなって逃げて来ちゃった。』
逃げる?あぁ、そういうことか。
伊武『大変みたいだな。良かったら、ここ座りなよ。』
栗田『い、いいの?』
神尾『噂の転校生か。よろしくな、俺は神尾 アキラ。』
って、何で同じクラスの石田まで挨拶してんの?
栗田『あ、お昼食べなくちゃ。』
栗田は弁当箱を取り出して蓋を開けた。
伊武『…漬け物。ボソッ』
栗田『えっ?…好きなの?』
伊武『あ、うん。』
栗田『食べる?味の保証はしないけど。』
差し出された弁当箱。俺は遠慮なく一切れ貰って口に入れた。
伊武『…ウマイ。ボソッ』
栗田『ホント?嬉しい。』
どうやら、栗田自身が作ったようで嬉しそうな顔をしていた。