第6章 氷帝☆忍足 侑士 編
日曜日の朝、今日の部活は休み。
いつもよりゆっくり目に起床した俺は身支度を整え、映画でも観に行こうかと思案していた。
ん?チャイム……あれ?誰もおらんのかいな。
仕方無く玄関に行きドアを開けると……途方に暮れている様子の女の子がいた。
俺は女の子を見て、暫く固まっていた。
見覚えがあるような気が…。
忍足『……あっ‼』
さっきまで夢の中にいた……。
忍足『違うてたら悪いんやけど……自分、綾那って名前とちゃうん?』
女の子の表情が、驚いたものとなった。
藤堂『10年前に会っただけなのに…。』
忍足『ビンゴみたいやなぁ。って、突然どうしたん?』
藤堂『引っ越して来たんです。』
忍足『えっ?』
彼女が言うには、昨日、東京に引っ越して来たばかりだとのこと。
両親は忙しいようで、新しい職場に行ってしまったとのこと。
藤堂『あの……私のこと、聞いていませんでした?今日、訪ねることになっていたと思うんです。』
忍足『多分、ウチのオカン…忘れてるんやと思うわ。堪忍や。』
藤堂『あ、いえ…気にしないで下さい。あの…これ、お土産です。』
忍足『おおきに。で、これから出掛けるん?』
藤堂『地図を貰ったんで、新しい学校の下見でもと思って…。』
その時の表情が、10年前の時とかぶって見えた。
忍足『学校の名前は?』
藤堂『えっと…氷帝学園です。母が相談した時に、薦められて…。』
オカン…ナイスアシストや。
忍足『そうなんや。ほな、俺が案内するわ。』
藤堂『えっ…でも、大丈夫ですか?彼女さんに悪いですし。』
忍足『おらへん。自分は彼氏おるん?』