第5章 氷帝☆跡部 景吾 編
泣き叫ばれたが、俺は無理矢理に納得させた。
ま、俺に楯突く奴は伊藤くらいのものだろ。
俺が音楽室に戻ると、言われた通りに伊藤が待っていた。ただ、愛おしそうにピアノの鍵盤を見ている。
跡部『そんな顔を、俺にも向けて欲しいんだがな。』
伊藤『あ、終わったんですか?どうなりました?』
跡部『一応は、納得させたぜ。ま、俺の取り巻きはあいつらだけじゃないがな。』
伊藤『でしょうね。ハァッ…。』
跡部『守ってやるよ。』
伊藤『えっ?』
跡部『俺のこと、嫌いか?』
伊藤『嫌いまでは…。』
跡部『なら、俺の傍に居れば好きになる可能性はあるってことだよな。』
伊藤『そんなに断ったことが…。』
跡部『そうじゃねぇ。ただ、お前に興味を持った。ただ、それだけだ。』
複雑そうな表情。
跡部『ったく…俺にここまで言われてその表情とはな。いい度胸だ。』
伊藤『私の一番は、ピアノです。そんな私を跡部先輩は…。』
跡部『上等じゃねぇか。直ぐに、変えてやるがな。ま、俺から逃げられるとは思うなよ。』
伊藤は、大きな溜め息を吐いた。
伊藤『本当に、物好きですね。後悔しても知りませんから。』
跡部『しねぇよ。』
腕を掴み、抱き寄せた。
伊藤『な、何を‼』
跡部『手始めに、俺を教えてやらねぇとなぁ?』
顔を寄せ、不意打ちのキスをした。
真っ赤になって、固まったままの伊藤。
跡部『何だ、初めてだったのか。』
伊藤『余計なお世話ですっ‼』
跡部『ハハハ…可愛いじゃねぇか。これから、やっかみなんか近付けないくらい真理亜に構ってやるから覚悟しろ。』チュッ