第5章 氷帝☆跡部 景吾 編
自宅で俺の好きなベートーベンの曲を聴く。
夕方の生徒会室でも耳にした曲だ。
弾き手によっては雰囲気が違って聴こえるものだが、あのときも同様だった。
翌週、何気に待っていたあの曲……。
忍足『珍しいなぁ、跡部。メッチャ機嫌が良さそうやん。何かええことでもあったんか?』
跡部『あ~ん?別に普通だ。』
忍足『へぇっ……ピアノ曲鼻歌にする辺りが跡部らしいけど、普通ってことはないやろ。』
俺様が鼻歌???
周りを見回すと、どうやら嘘ではないようだ。
跡部『ったく……何もねぇーよ。』
返答を期待していたらしく、みんな残念そうな溜め息が聴こえてきた。
全く……。
朝練を早々に切り上げ、教室に向かう。
賑やかな声の中、いつもと変わらない風景。
そして……放課後。
生徒会室で書類をさばいていると……あの曲が流れてきた。
そして……こんな日に限って忙しいときやがる。
だが…気付いた。朝練の時に指摘された鼻歌……。
跡部『……しかし、いい腕だ。』
仕事を片付けてから向かったが、やはり、誰もいなかった。
跡部『間に合わなかったか……。』
そんな【ベートーベンの女】(←名付けた、そして女だと決めつけている)の弾くピアノが楽しみとなっていた。
最近、あの曲ばかりを耳にしている。
確かに、好きな曲だ。だが、【ベートーベンの女】が奏でるメロディーを耳にしたくて仕方なくなっていた。
忍足『で、最近はどうなん?』
跡部『何がだ?』
忍足『隠し事かいな。冷たいなぁ……。』
宍戸『何かあったのか?』
鳳『どうかしたんですか?』
ハァッ……口煩い。お前らは小姑かよ……。