第15章 青学☆手塚 国光 編
手塚『大丈夫か?』
安曇『以前にもお聞きになられましたが、私の方も返事は変わりません。』
一見、冷たく聞こえる言葉だが…安曇はいつだって俺に気を使わせない為に、そういう返事をする。
再び、静かになった生徒会室。アイツのノートパソコンのキーを打つ音が規則正しく耳に入ってくる。
そんな時、キーを打つ音が止まった。
手塚『どうかしたのか?』
安曇が集中力が途切れるのは珍しい。
安曇『…いえ。少し……いえ、何でもありません。』
手塚『いつも安曇には世話になっている。何かあるのなら、遠慮なく言ってこい。』
安曇は驚いた顔をしていたが……首を横に振った。
安曇『お気遣いだけで充分です。』
いつもなら、他人のプライベートに深入りしない主義だが……今日の安曇の様子は違って見えた。
手塚『俺では頼りないか?』
安曇『いえ…。』
そこへ着信を表す携帯の振動する音。
一瞬だが、安曇の表情が青くなった。
手塚『出ないのか?』
安曇『……。』
明らかに様子がおかしい。
手塚『安曇!』
安曇『っ!?あ、すみません…。今日は失礼します。』
逃げるように席を立つ安曇を、俺は引き留めていた。
いつも穏やかでソツないアイツのこの態度に、一人にしてはいけない気にさせられた。
手塚『何がある。話してみろ。』
安曇は、俺の強い口調に観念したのか力が抜けたかのように腰を下ろした。
安曇『…告白をされました。』
手塚『告白?』
安曇『お断りしました。ですが……電話をかけてきたり、家に来られたり……。』
確か、安曇の両親は共働きで普段は家にいない。年の離れた兄がいるらしいが、今は一人暮らしをしている。
そんな状況で、家に来られると言うのは……。
それは、無意識だった。
俺の手は、アイツの頭を撫でていた。
普段の俺から、想像もつかない行動だが……俺は、気付いてしまった。