第2章 「送る。」
『…で、この頃は正統カリフが乱れ、アリーが……』
世界史は私の好きな教科。
特に今やってるイスラーム教関連は得意範囲。
いつもならわくわくしながら受ける授業も、今日はそわそわして落ち着かなかった。
認めたくないけど、私、完全に田中が気になってる。
うわああ……なんでよりによって田中なんだ……女子相手だと口下手で、うるさくて…ん?
女子相手だと口下手?
じゃあなんで私の前では普通なの?
……え、まさか女子として見られてない?
私は世界史の授業が終わるなり、トイレに駆け込んだ。
鏡を睨みつける。
…自分では女子のつもりだけど。むしろ頑張って髪とか内巻きにしたりして可愛くしてるつもりだけど。ナチュラルにはメイクして頑張ってるつもりだけど。
なに?これで女子に見られてないの?
まさか私、ここまでしてもブスなの?
…正直な話、私は顔は普通に並ぐらいには可愛いつもりでいた、というか可愛くあろうとした。
なのに?田中に女に見られてない?
トイレから出る際にすれ違う派手な子を見て、ため息が出る。
今までならあれはやりすぎて可愛くないとか思ってたけど、最近の男子ってそんなことないの?
じゃあなに?毎日もっと髪派手に巻いて?つけまばっちしつけて?グロスも塗って?スカートばかみたいに短くしなきゃなんないの?
「わああ…もう訳わかんない…。」
私は机に突っ伏した。
「どうしたの?利歩。」
「理沙ぁ~私、疲れた…。」
「それは勉強?部活?恋??」
「……。」
恋。
そっか、これ、恋なのか。
恋……まさか日頃ばかだなぁとしか思ってなかった田中に……。
恋かぁ……。