第2章 「送る。」
「おっ、宮口!
今から移動?」
「うん、今から世界史!
田中は体育終わったとこ?」
「おう!
バレーだったからな!
縁下とチーム組んでけちょんけちょんにしてやったぜ!」
あの雨の日以降、廊下で会ったりしたら、どちらからって訳でもなく軽く話すようになった。
なんか急に友達になった感じかな。
「おーい田中ー!シーブリーズ貸してー!」
「おー今行く!じゃな。」
「うん。」
そう言って田中が手を上げてすれ違う──瞬間、私の頭を軽くぽんっと叩いた。
男の子、って感じの匂いが鼻をくすぐる。
「……!?」
なんか、田中相手にどきどきした!
あいつも結構、さり気なくイケメンなことするよね…。
振り返って田中のほうを見ると、縁下君と絡んでいた。
嘘でしょ、田中相手にときめくなんて。
うるさくて、熱くて、元気で、頭悪くて、
田中は、バレー部エースで、私は女バレのマネで、本当は大して接点なんてないよ。
ないはずだよ。