第5章 君を呼ぶ
結局、烏野男子バレー部はあの伊達工にストレート勝ちをして、その日は試合終了。
田中にお疲れ、って言いに行きたかったけど、すぐ青城の試合が始まるから、慌てて客席に上っていって、会えなかった。
「明日、青城と当たるんだって。」
帰りのバスの中。道宮先輩がリーグ表を見ながら言った。
「うげっ……青城?
やなとことあたったね。」
「青城って……及川さんのとこですよね?」
「そう。白鳥沢に次ぐ実力校って言われてるらしいよ。」
「………。」
「利歩~?何思いつめた顔してんの?」
「しっしてないもん!」
明日は、青葉城西。
三回戦。ここに勝てば、次は………。
「じゃあお疲れ様。
明日はゆっくり休んでね。」
烏野に帰ってきて、ミーティングをした後、皆散り散りに帰っていった。
「? 利歩?
帰らないの?」
2年のバレー部の何人かが声をかける。
「うん。」
「そっか。」
あまり深入りすることなく、彼女たちは帰っていった。
皆今日は疲れたのだ。当たり前の反応である。
「……男子、待ってるの?」
後ろから声をかけられて振り返ると、道宮先輩がいた。
「あっ……はい。
……あの、道宮先輩、なんで私が、男バレに好きな人がいるって……?」
「あー……私、田中と宮口が帰るとこ、見ちゃったんだよね。」
「っ!?」
「あはは、顔赤くなったぁー!」
「だって……!
……見られてたんですね。」
「うん。でも、いい雰囲気だと思ったよ。」
「う……なんか恥ずかしいです………。」
「すっかり乙女だね!可愛いっ!」
「なっ、ちょ、からかわないでくださいよ!」
「ふふ、宮口、頑張ってね!」
道宮先輩は笑顔で帰って行った。
「………見られてたんだ。」
恥ずかしくって顔を覆う。
「一緒に帰ってるとこを見た、ってことは、冴子姉さんに車で送ってもらった日じゃなくて、傘さして帰った日だよね……?」
それって、相合い傘……見られてるじゃん!!
「恥ずかしい……。」
絶対今、顔真っ赤だ……。
私は体育館裏の石段に座り、顔を膝に埋めた。