第4章 文字で会える
「あ、カメラ起動したよ。」
「貸して。」
一瞬指と指が当たる。
それだけで顔が赤くなった気がする。
落ち着け自分!田中に見られたら更に恥ずかしくなるぞ!
「ん。」
「ありがと。」
「え、なにこのアイコン。」
「熊だよ。」
「なんでこんな熊なの!?
もっと可愛いやつあるだろ!」
田中が言ってるのは、私のアイコンの熊(実物)。
「アイコンを動物の写真にすると運気があがるんだよ!」
「それまじ?」
「それはわからないけど…。
あ、でも、確かにこのアイコンにした日、良いことあった!」
「へぇー。なにがあった?」
「んー…秘密。」
「え!?なんで?」
「えへへ、いつか教えてあげる!」
だって、この熊のアイコンにした日、あの雨の日だったんだよ。
良いことって、田中と話せたことだよ、なんて言えないもん。
空を見上げると、雨は止んでいる。
田中も傘を畳んだけど、私との距離はさっきまでと変わらなかった。
☆★☆★☆
私の家の前まで来ると、あぁもうお別れか、って少し寂しくなる。
「じゃあ、ありがとう、田中。」
「どういたしまして!
またな、宮口!」
「うん!」
「…また一緒に帰ろうな。」
田中の表情が、柔らかくなった気がした。
「…うん!」
私は満面の笑みで答えた。
やっぱり、好きだな。
☆★☆★☆
家に入ると、家族全員がニヤニヤしていた。
「ただいまー。」
「おかえり~利歩。」
「おかえり姉ちゃん。」
「……なんで皆ニヤニヤしてるの?」
すると弟が言った。
「玄関まで送ってもらっていちゃいちゃするとか、姉ちゃんなかなかやるね。」
「……っ、あのね、今の友達だから!」
「ちょっとヤンチャそうな子だったわねぇ。
でもああいう男の子って良いわよねぇ。」
「お母さんまで何言ってんの!ほら、早く食べよ!」
その日の夕飯は、田中のことで話題が持ちきりだった。
正直かなり恥ずかしかったけど、悪い気はしなかった。