第4章 文字で会える
「ううん。
むしろ、ありがとう。
そんな疲れてるのに、私と雨止むの待ってくれて、嬉しかった。」
すると田中は、一瞬腕を伸ばした……ように見えた。
「…帰るか。」
「あ、うん。」
お礼を言ったけど、そっぽを向かれてスルーされた。
重かった…かな。
少ししょんぼりしながら、田中の半歩後ろを歩く。
「宮口、あのさ、」
すると、田中が振り向いた。
「なに?」
「……あの、」
田中が何か喋りかけた瞬間。
パラパラと雨が降り出した。
「うげ!まじかよ!」
田中は焦って傘を開いて…、私を見て、一瞬手を止めた。
何か迷っているかのように見えたけど、すぐに田中は私に手を伸ばした。
肩をぐっと、寄せられた。
「濡れてねーか?」
そう言って田中は私も濡れないように傘を差した。
「あっ…うん、ありがと。」
今、この光景を恥ずかしくて誰にも見られたくない。
でも、もう少しこのままでいたい。
おんなじ傘に入ったままでいたい。
田中は、「じゃ、帰るか!」と笑いながら言った。
「最初からこうすれば良かったな。」
歩きながら田中がぼやいた。
「…あ、田中、さっきなにか言いかけなかった?」
「え?あー…。
あのさ、
連絡先、交換しね?」
…えっと……えっと。
「…なんか、ごめん。」
私が何も言わず固まってしまったせいで、田中はちょっと顔を赤くして謝った。
「あ、ごめ!そういんじゃなくて、ちょっと考え事してたというか…。
……連絡先、交換しよ!」
私はそう言って、スマホを取り出した。
うわあああ今の絶対不自然だったうわああああ
「……どうやってやるの?」
私はスマホを開いて、根本的なところからわからなかった。
「え?あーじゃあ、宮口はカメラ出して。」
「カメラ?」
「俺のQRコード出すから。」
「そんなことできるの!?」
「お、おう?ラインだぞ?」
「…知らなかった。」
「宮口って機械音痴なのか?」
「…恥ずかしながら。
正直、スマホの使い方も微妙なんだよね。」
うわ、こんなとこで機械音痴とかバレて恥ずかしー…。