第4章 文字で会える
田中は西ノ谷君に何か少し話したあと、手を振って別れた。
…?なんで一緒に帰らないんだろ。
そう思っていたら、田中がこっちに走ってきた。
「宮口!また傘忘れたのかよ!」
田中は笑いながら言った。
「そうなんだけど…西ノ谷君、一緒に帰らないの?」
「あー、ノヤっさんは大丈夫。
それより、宮口はどうやって帰んの?」
それより、と言われてちょっと嬉しくなる。西ノ谷君には悪いけど。
「もうすぐ止みそうだから、止んだら走って帰るよ。」
「止んでまた降るかもしれねーじゃん。」
「そのときは…そのときだよ。」
「はぁ?なんだそれ!」
田中は愉快そうに笑った。
「じゃ、俺も止むまで待つ。」
「え?」
「だって、お前1人でここいたって、つまんねーだけだろ。」
「いや、良いよ。田中だって疲れてるでしょ?
早く帰って休みなよ。」
「良いってそんなん!」
田中はそう言うと、階段に腰掛けた。
「あ、そう言えばさ、青城と練習試合したらしいじゃん。どうだった?」
「おう、勝ってきたぜ!」
「え!?勝ったの!?」
「まぁな!例の1年コンビが活躍してくれたし、まぁなにより、向こうの主将が終盤しか出なかったっていうのがデカいけどな。」
そう言って田中は苦笑した。
「でもすごいじゃん!」
……そこで話題が切れた。
あれ、いっつもこんなことあったっけ……。
気まずくて田中の方を見ると、首がカクンとしていた。
「…田中?」
近寄ると、スースーと寝息が聞こえてきた。
「…やっぱり、疲れてるんじゃん。…ありがと。」
私は田中の隣に座った。
ジャージの隙間から見える鎖骨や首筋を見ると、男子って感じがすごくする。
…なんでこんなに疲れてるのに、私と雨止むの待ってくれたんだろう。
田中のがっくりうなだれた首を見ながら、私はちょっと嬉しかった。
「…あ。」
空を見ると、雨が止んでる。もう暗い。
「田中、起きて。」
「んあ?」
田中を揺すると、間抜けな声を出して目が覚めた。
「…あれ、俺寝てた?」
「うん。…お疲れ様。」
「うわーまじかよ…なんか、悪ぃな。
1人だとつまんねーだろとか言っといて…。」