第4章 文字で会える
月日は流れ、IH予選間近。
その間、私と田中の関係で動いたことと言えば、私が前よりも声をかける回数が少し増えたこと。
田中を意識しすぎて、上手く話せないことがたまにあること、
…の2つだけである。
今日も私達バレー部は、IH予選に向けて練習している。
「集合!」
「「「はい!」」」
「お願いします!」
「「「お願いします!」」」
ミーティングが始まった。
普段は穏やかな女バレの雰囲気も、最近は少しだけ張り詰めた空気が漂っている。
「皆、IH予選まであと1ヶ月しかないけど、あと1ヶ月もある。
これからの努力次第で、勝算は大きく動くよ!
気張りすぎないようにね!」
「「「はい!」」」
道宮先輩からの最後一言で、ミーティングは終了した。
IH予選。
これに負けたら、3年生は引退。
マネージャーとは言え、私も最高学年になってしまう。
しっかりしよう。
☆★☆★☆
…ってさっき誓ったのに、今日は雨。
私はまたも傘を持ってこなかったから、渡り廊下で空を見上げながらぼーっとしていた。
そう言えば、前もこんなことあったな。
あの日も天気予報の言う降水確率が40%だからって持ってこなかった。
今朝は30%だったけど。
そして、前はそのおかげで田中と仲良くなるきっかけができた。
でも、今日は…。
チラッと第一体育館を見る。
2年生と騒ぐ田中がちょうど出てきた。
ほらね、傘持ってきてる。今朝見かけたとき、傘持ってたもん。
田中は傘を開きながら、西ノ谷君と喋っていた。
正直、あわよくばまた田中と帰れるかな、と思っていたけど、西ノ谷君がバレー部に復帰してから、田中は西ノ谷君と帰っている。
だから、例え今、田中が私に気づいても、多分声をかけたりするだけで、一緒には帰ってくれない。
…まぁ、今日の雨はすぐに止みそうだから、止んだら走って帰るし、別に良いもん。
そう思いながらも、田中から目を離せないでいたら……。
目が合ってしまった、田中と。